ふたつの顔を持つ男。いったいどちらが本物なのだろう。
11月15日、兵庫県知事選の投開票日を2日後にひかえた金曜日のことだ。告発文書問題で失職し、再選に臨む斎藤元彦氏の街頭演説を聞きに、兵庫県第2の都市である姫路市に向かった。
失職直後にひとりぼっちで駅前に立つ斎藤氏の姿を、SNSのショート動画で見ていた。それが選挙戦に入ると、徐々に人垣ができるようになり、投票日直前には、何かに突き動かされているかのような群衆に囲まれている斎藤氏の動画が流れてきた。いったい何が起きているのか、知りたかった。
この日の斎藤氏の演説は駅北側のロータリーで、午後7時から行われる予定だ。東京から新幹線で姫路駅に着いたのは、その1時間ほど前。すでに「NHKから国民を守る党」(N国)の立花孝志氏が駅前でマイクを握っていた。
同じ知事選に立候補している立花氏だが、告示日以降は斎藤氏の演説予定時間の前後に同じ場所にやってきては、斎藤氏の応援を続けてきた。
聴衆は2階デッキから見下ろしている人も含めれば、1000人近くに達しているかもしれない。
前のほうには中年の男女の姿が多い。グループで会話を交わしながら、イベントを楽しむかのようだ。後方に行くにつれて20代の若者の姿が増えてくる。こちらは仕事や学校帰りなのか、単独での参加のようだ。
立花氏の軽妙なトークが続いている。